OJTだけで若手が育たない理由

「うちは実践で覚えさせるから」。小さな会社では、これが育成方針になっています。入社した翌週には先輩の横について、見よう見まねで仕事を始めます。
これでうまく育つ人もいます。育たない人もいます。差が出たとき、本人の資質の問題として片づけてしまう会社を見かけますが、OJTという方法の側にも原因があります。
OJTで身につくこと
OJTが得意なのはその仕事の手順です。見積書の作り方、お客様への電話のかけ方、社内システムの入力の仕方。目の前でやって見せれば伝わり、何度かやれば覚えます。
現場の空気も伝わります。どのお客様が何を気にするか、どの部署に先に話を通すべきか。こういうことは、横で見ているのがいちばん早く身につきます。
OJTで身につきにくいこと
一方で、考え方の型は横で見ていても伝わりません。
先輩が上司に報告する場面を見ても、若手に見えるのは「先輩が話して、上司がうなずいた」という結果だけです。先輩が話す前に頭の中で結論を決め、理由を2つに絞り、数字を用意したことは見えません。
優先順位のつけ方も同じです。先輩がA社の仕事を先にやったことは見えても、なぜB社より先にしたのかは、聞かなければ分かりません。聞いても、先輩自身がうまく説明できないことがあります。長年の勘でやっているからです。
結果として若手は、手順は覚えたのに、少し状況が変わると動けない、という状態になります。
教える人による差
OJTのもう一つの弱点は、誰に付くかで学ぶ内容が変わることです。
報告が上手な先輩に付いた若手は、報告が上手になります。報告が長い先輩に付けば、長い報告を覚えます。教え方が丁寧な先輩もいれば、忙しくて放置する先輩もいます。
3年たつと、同期の間で大きな差がついています。本人の努力の差もあるでしょうが、最初に誰の横に座ったかの影響は小さくありません。
会社としては、報告の形が人によってバラバラになります。上司は部下ごとに読み方を変えることになり、そのたびに時間を取られます。
忙しい会社ほど回らない
OJTは教える側に余裕があるときしか機能しません。
人手が足りない会社では、先輩は自分の仕事で手一杯です。若手に説明する時間が取れず、「とりあえずこれやっておいて」になります。若手は理由が分からないまま作業をこなし、間違えても、なぜ間違いなのかを教わる機会がありません。
教える時間がないから育たない。育たないから先輩の仕事が減らない。だから教える時間がない。この輪から、OJTだけで抜け出すのは難しいと考えています。
補い方
OJTをやめる必要はありません。足りない部分を別の方法で補います。
考え方の型は現場から離れた場で、まとめて教えます。報告は結論から、仕事は分けてから始める、問題は症状と原因を分ける。こうした型には名前があり、言葉で説明できます。社内で教えても、外の研修を使ってもかまいません。
その際は、同じ時期に入った若手や、同じチームのメンバーに、同じ型を教えるようにしてください。全員が同じ型を知っていれば、先輩は「結論から」の一言で指摘できます。OJTの時間が短くても、伝わる量が増えます。
型を学んだあとのOJTは効き方が変わります。先輩の報告を横で聞いた若手が、「いま結論から話した」と気づけるようになるからです。見えなかったものが見えるようになる、と言えば近いでしょうか。


