社長の「見て覚えて」が若手に伝わらない理由と、仕事の基本を言葉にする方法

お客様との打ち合わせに、入社2年目の若手を連れて行った。社長がどう話を進めるか、横で見て覚えてほしかった。
帰りの車で「どうだった?」と聞くと、「社長、話がうまいですね」。翌週、若手が一人で同じお客様に会いに行ったら、話がまとまらずに帰ってきた。
社長が見せたのは、話がうまくいった場面でした。若手に見えたのもその結果だけです。社長が打ち合わせの前に何を考え、話の途中で何を確かめていたかは、横にいても見えません。
見て覚えられること、覚えられないこと
見て覚えられるのは、目に見える手順です。名刺の渡し方、見積書のどこに何を書くか、社内システムの入力の仕方。目の前でやってみせれば伝わります。
見て覚えられないのは、頭の中で起きていることです。
- 打ち合わせの前に、今日決めたいことを1つに絞っていた
- 話の途中で、相手が何を気にしているかを確かめていた
- 最後に、次に誰が何をするかを口に出して確認していた
社長はこれを意識せずにやっています。だから、若手に「何を見ればいいか」を伝えられません。若手は社長の話し方や雰囲気を見て、肝心の部分を見落とします。
社長のやり方を書き出す
社長の頭の中にあることを若手に渡すには、一度言葉にする必要があります。
方法は単純で、社長がいつもやっている仕事を1つ選び、その手順を順番に書き出します。例えば、若手から報告を受けるとき、社長は何を聞きたいのか。
書き出してみると、こんな形になることが多いようです。
- まず、結局どうなったのかを知りたい
- 次に、なぜそうなったのかを知りたい
- 最後に、それが本当かどうかを確かめたい
これは結論、理由、根拠の順に報告するという型そのものです。社長は毎日「で、結論は?」と聞き返しながら、この順番を求めていたことになります。
書き出すと見えること
書き出してみると、社長が求めていることの多くは、その会社だけのやり方ではないと気づきます。
報告は結論から。仕事は分けてから始める。失敗したら、症状と原因を分けて考える。どれも、業種や会社の大きさを問わない、仕事の基本です。名前もついていて、本や研修で教えられています。
一方で、その会社でしか通用しないこともあります。このお客様にはこの順番で説明する。この取引先は月末に連絡すると嫌がる。こちらは社長や先輩にしか教えられません。
分けてみると、社長が教えるべきことは思ったより少なくなります。仕事の基本の部分は社長でなくても教えられるからです。
言葉にしたものを渡す
書き出した手順は若手に紙で渡すだけでも効果があります。ただ、渡しただけで身につくことはまずありません。
身につけるには、自分の仕事で何度か試す必要があります。報告の型なら、週報を結論から書いてみる。上司に結論から話してみる。うまくいかなかったら、どこで順番が崩れたかを振り返る。これを何週間か続けて、ようやく自然にできるようになります。
社長が毎回その相手をするのは大変です。仕事の基本の部分はまとまった形で学ばせ、職場で試す期間を取る。社長は試した結果を見て一言かける。この役割分担なら、社長の時間はそれほどかかりません。
見せるのは言葉にしたあと
社長の仕事を見せること自体は、悪くありません。順番が逆なだけです。
先に型を言葉で伝えておけば、若手は社長の打ち合わせを見ながら、「いま、今日決めたいことを確認した」と気づけます。見て覚えるのは、何を見ればいいかが分かってからです。採用しても社長の仕事が減らない理由については、採用しても社長の仕事が減らない理由と、最初に手放すことにまとめました。


