社員研修の稟議書の書き方:目的と選定理由で止まらないために

研修の稟議書を出したら、社長から一言だけ返ってきた。「で、これをやると何が変わるの?」
人事や総務を兼任している担当者から、こういう話をよく聞きます。金額や日程の欄は埋まっているのに、目的と選定理由の欄で止まる。書き直して出しても、また同じところで聞き返される。
決裁する側が知りたいのは、研修の中身よりも、お金を出したあとに職場で何が変わるかです。稟議書はそこから逆算して書きます。
決裁者が見ている欄
研修の稟議で、決裁者が読むのはだいたい次の4か所です。
- 目的:何のためにやるのか
- 選定理由:なぜこの研修なのか
- 費用:いくらかかるのか
- 業務への影響:誰が、どれだけ現場を抜けるのか
研修名や日程は読み飛ばされても困りません。この4か所で聞き返されなければ、稟議は通ります。
目的の書き方
目的の欄でいちばん多い書き方は、「若手社員のスキル向上のため」です。これだと、決裁者は何も判断できません。スキルが何のことか、向上したかどうかを誰がどう確かめるのか、どれも書いていないからです。
目的には、職場で起きている困りごとを1つ書きます。
若手社員の報告が経緯から始まり、結論が最後に来るため、上司が内容を聞き返す時間が週に何度も発生している。報告の型をそろえ、聞き返しを減らす。
こう書くと、決裁者は自分の経験と照らし合わせられます。「たしかに営業部の報告は長い」と思えば、それで目的の欄は通ります。
困りごとが複数あっても、目的の欄に書くのは1つか2つにしてください。5つ並べると、どれも本気でないように見えます。
選定理由の書き方
選定理由は比べた結果として書きます。ほかに何を検討して、なぜそれを選ばなかったのか。これがないと、たまたま見つけた研修に見えます。
比べる相手は大きく分けると次の3つです。
- 自社で企画して、社内の誰かが教える
- 講師を呼んで、社内で集合研修をする
- 動画のeラーニングを契約する
例えば、社員50名の会社で若手5名を対象にするなら、こんな書き方になります。
自社での企画は、教える人材と準備の時間が確保できないため見送った。講師を呼ぶ集合研修は、5名に対して講師費用が割高になる。eラーニングは安価だが、質問できず、受講したかどうかの確認も難しい。オンラインのライブ研修は、他社と同じ回に参加する形のため費用を抑えられ、講義中に質問もできる。
完璧な比較である必要はありません。決裁者が「ほかも見たうえで選んだのだな」と分かれば十分です。
費用の書き方
費用は総額と1名あたりの金額を両方書きます。総額だけだと高く見え、1名あたりだけだと全体がつかめません。
税別と税込みのどちらで書くかは、社内の決まりに合わせます。決まりがなければ、両方書いておくと聞き返されません。
見積書は稟議の前に取っておきます。見積書が添付されていない稟議は、「金額はこれで確定なのか」と聞かれて一度止まります。申し込む前の相談の段階で見積書を出してくれる研修会社は多いようです。
業務への影響の書き方
決裁者が気にするのに、書き忘れられやすいのがこの欄です。
社長や部長からすると、研修の費用より、若手が現場を抜けることのほうが痛い場合があります。丸一日の研修なら、その日の仕事は誰かが代わりにやることになります。
書くことは3つです。誰が、いつ、何時間抜けるのか。出られない日があったときにどうなるのか。
対象者5名が、5週間にわたり週1回90分(平日午前)受講する。1名あたり計7.5時間。業務の都合で出られない回は、別日程または録画で補える。
ここまで書いてあれば、現場の部長も反対しにくくなります。
稟議の前にやっておくこと
稟議書を出す前に、対象者の上司に一声かけておくのがおすすめです。
決裁者が迷ったとき、最初に意見を聞くのは現場の部長です。そこで「聞いていない」と言われると、内容がよくても止まります。逆に部長が「うちの若手に必要だ」と言ってくれれば、たいていはそのまま通ります。
時間がなければ、稟議書の下書きを部長に見せて、目的の欄だけ確認してもらうのでも構いません。困りごとを書いた目的の欄は、部長がいちばん実感を持って読める部分です。
よくある差し戻しの理由
最後に、差し戻されやすい書き方をまとめておきます。
- 目的が「スキル向上」「意識改革」のように、確かめようがない
- ほかの選択肢を比べた形跡がない
- 見積書が付いていない
- 受講者が現場を抜ける時間が書いていない
- 研修のあとに何を報告するかが決まっていない
最後の1つは、稟議の段階では書かなくても通ることがあります。ただ、受講後に「で、どうだった?」と聞かれるのは確実です。何を報告するかを先に決めておくと、稟議書にも一行足せます。報告のまとめ方は研修のあと、社長に効果を報告するときにまとめることに書きました。


